あるクラリオン星人のと対話


by bwv1001

小さな新年会の様なもの

 近い友だちというのは、電話とメールばかりで、なかなか普段会うことがない。今年は正月に会おうか、ということで、友だちの彼女も一緒で、小さな新年会をした。

 友だちの彼女は、からださんが不自由なので、駅の近所くらいで場所を探した。幸い、ゆっくりできる中華のお店が開いていた。彼女が障害になってから、初めて会う機会だったので、いろいろ心配していた。

 確かに、彼女の障害は重い様だ。しかし、重いのだが、不思議なことに、難病認定がされていない。会う前は、どうしたらいいか、戸惑っていた。

 実際、会ってみると、歩くことさえ大変なのである。全身が普通の人と違って不自由になっている。こういうとき、どうしたらいいのか、正直なところ、オレには分からなかった。

 そのあたりのことをエールーエンに聴いてみたい。


 「エールーエン、きょうはどう感じた」

 「あなた、彼女の障害より、自分の対応に対して、自信がないのね」

 「仰る通りだ。降りかかってきた様な災難に、オレは何もできないのだから」

 『何もできない、という気持ちが、罪悪感につながるのね。でも、罪悪感って、どうなのかしら。所詮は、彼女に代わって、その障害を引き受けることなど、誰にもできないわ。

 何もできないから、何かをしたつもりにすること、というのが、罪悪感と言っていいわね。でも、あなたは、そんな気持ちを持つことはないわ。それに、そんな気持ちは、相手に対して失礼だわ』

 「オレもそのことは、会うまえに考えたよ。歩くのも大変、姿勢を保つのも大変、ってきいていたから。

 でも、オレが決めていたのは、ひとつだけ。不自由以外に関しては、変わりなく話すことだけだった。すくなくとも、そういうものが、自尊心の問題ではないか、と」

 『障害があっても、対等である、というのは、大事な考え方だわ。その意味では、あなたの考えは間違ってはいないわ』

 「でも、歩いていても、倒れそうになるんだ。本当に、それで、転んで、頭をぶつけそうになるんだ」

 『あなたは、ちゃんとそこはフォローしたわ。それに、彼女が歩こうとしているときには、あなたは、手をださなかったわよね。それって、あなたが悩んでいる、愛情なんじゃない?』

 「オレには、そんなことは自信がないよ。ただ、彼女は、自分で歩こうとしているんだ。そこで手をかしたら、彼女の可能性を奪ってしまうと思うんだ」

 『そう。あなたは、そのことを、よく知っているわ。可能性を奪われる、そのこと自体が、存在の危機である、というのは、あなたの経験からくることね。それは、あなたなりの他者の理解の仕方だと思うわ。それは大事にした方がいいと思うわ』

 「介護とかでも、親切にすればするほど、早く死ぬ、という話しを聞いたことがある。それが、満足して死ぬことなのか、それとも、可能性を奪われて死んでいくのか、オレには分からない」

 『親切にすることが、可能性を奪い、それが、"自分にはできない"という絶望になることは、ありがちなことだわ。

 介護もそうかもしれないけど、教育もそうだわ。あなたは、そこが原因で、自分がおかしいのだ、と思っている。いや、思い込まされているのだと思うわ。

 あなたは、自分には、愛情がない、と思っている。でも、それは、洗脳されている、ということはないのかしら?』

 「それについては、オレは自信がなくて。

 もともと愛情がない、という資質であるのか、それとも、後天的なものであるか、というのは、自分には分からない。

 でも、そのことで、苦悩してきた、ということだけは間違いないね」

 『もう、あなたは、そのことで苦悩することはないのよ。むしろ、そのことで苦悩している人を、あなたが救うことはできないのかしら?』

 「オレが救う立場になるって、正直なところよく分からないな。でも、この前から、君はそういうことを言う様になったね。だから、無視はできない言葉なんだけど」

 『あなたと同じ苦悩で、いまだに激しく苦しんでいる人がたくさんいるわ。そういう人たちのはなしを聴く、ということは、あなたにはできないのかしら』

 「確かに、同じ経験をした人の話というのは、ある意味で分かるところがあるかもしれない。けど、それと、その人たちのはなしを聴く、というのは、次元が違うことなのだと思うけど...」

 『でも、あなたは、わたしのはなしを聴くことはできているじゃない。それは、なかなかできないことよ。

 あなたは、自分は、他人の話を聴くことができない、と思い込んでいるでしょ。でも、からだの不自由な彼女のはなしをちゃんと聴けていたと思うわ。それも、"不自由なんだから、聴かなきゃ"という意味ではなく、楽しんで聴いていたと思うわ。そのことが、素晴らしいとは思わない?』

 「確かに、サッカーが好きな人じゃないと、できないはなしは、あったよね。彼氏は、サッカーしらないし、ましてや、バルサの選手なんか、彼は知らないよね」

 『でも、あなたは、サッカーのはなしをしたことを、罪悪感として捉えているのね。からださんが不自由な、彼女は、自由に動ける選手にあこがれているんだ、と』

 「その通りだね。彼女が、如何に、自由に動きたいか、っていう気持ちが、そのはなしから伝わってきて、はなしはしてるのに、どういったらいいか、分からなかった」

 『でも、それは、彼女に対して失礼なことじゃない?彼女は、確かに今、動ける時代の彼女をうらやましく思っているわ。でも、彼女は、不自由さを通じて、"感謝"という気持ちを実感し、学んでいる、ということはないのかしら。その意味では、あなたは、別の意味で不自由な人だわ』

 「エールーエンは厳しいね。確かに、不自由を体験することでしか、自由な自分を理解し、そして感謝するということは、難しいかもしれないね。

 ひょっとすると、エールーエン的には、障害自体が恵みだ、という考え方をしているの?君は、どうもそんな考え方をしている様な気がして。オレも、すこし、君のことがわかる様になってきたからね」

 『よく分かっているわね。まだ会って間もないのに。

 ということは、あなたは、わたしのはなしを聴けている、という証明にはならないの?』

 「自信がない。というか、君は、もっと文明の発達した世界で生きているから、オレとは次元が違うんではないか、という気がして、いまも自信がないんだ」

 『でも、この前も言ったでしょ。わたしたちのマスターとあなたたちのマスターの行き着くところは、同じ様だと。わたしとあなたは、確かにレヴェルが違うかもしれないけど、あなたの星のマスターは、わたしの星のマスターとはそんなに変わりはないの。ただ、普通にいる、あなたたちは、わたしたちの星の普通にいる人たちとはレヴェルが違うわね。

 あなたたちからすると、普通の人のレヴェルが上げ底されているのが、わたしの星の在り方なのよ』

 「そうかもしれない。オレたちに較べると、君たちは長生きだし、もっと違う意識の水準になっているのかと思っていたけど、そういうことじゃないんだね」

 『そう。わたしだって、学ぶものの一人でしかないわ。けれど、わたしたちの積み上げてきた歴史からすると、全体のレヴェルが違う、というだけのことなのよ。だから、わたしは、自然に生きてきただけなの。でも、だからこそ、わたしはあなたとこうしてはなしができるのだわ。これはわたしたちの能力のおかげ。

 でも、あなたは、わたしを"聴く"ことができている。それは素晴らしいことではないかしら。彼女のサッカーのはなしを聴くとおなじくらい』

 「エールーエンは、オレが自信がないことについて、オレのやってることに、もっと自信を持つ様に、と言ってるのかな?」

 『そうね。あなたは、自信がなさすぎるわ。それは、愛情の問題を抱えているからかもしれないけど。

 でも、あなたは、愛に代わって、"空洞"という発想を持つことができたわ。それは、わたしの世界の感覚でいうと、愛の問題を、充分に"空洞という在り方"で、補完できていると思うわ。

 ないものを求めてもしょうがないじゃない。それに、空洞という考え方は、必ず愛に結びついていくわ。それが、あなたの得た可能性、ということを、自分で認めることはできないのかしら?』

 「うーん、エールーエンに言われると、それでいいのかもしれない、と思うけど、自分では自信がなくて...」

 『でも、わたしはこうしているわ。あなたの一部として、あるいは"はなし相手"として、わたしはいるわ。

 もし、あなたが、自信がなくとも、わたしとこうして対話していることに、あるいは、その内容に自信が持てないかしら。そのことが、もっと素晴らしい意味をもっている、ということを意識して欲しいとおもうわ』

 「て、いうか、君がいないと、本当に、オレは分からないまま、ああだこうだと迷っているばかりで、自分の価値については、自分で評価できないままなんだよね」

 『あなたのいうことはよく分かるわ。あなたの文明では、自分を評価してはいけないから、そうなるのよ。わたしたちは、そういう環境ではなく、自分の意志で、自分の価値を追究することが普通、というか、認められているだけなの。

 あなたの星の権力者、あるいはその立場にある、親、教師、上司、社会、権力というものは、あなたたちの、本当の力を怖れているの。だから、自己認識についても、あなたたちはおぼつかないまま、生活を続けているのだわ。わたしから見ると、それで、よく生きてきたわね、とそのことの方が奇蹟の様に感じられるわ』

 「たしかに、自分でいきることを、本当の意味では否定されているのが、この星の人間の社会なんだと思う。そして、それに適応しないと、生きていけないみたいな感じがするんだ」

 『ちょっと話しを戻しましょうね。からだの不自由な彼女というのは、あなたの星では、"あってはならない存在"なのね』

 「たぶん、そうだと思う」

 『あってはならない存在に共感したり、愛を感じたり、あるいは、手をかしたりしてはならない、という感覚が、あなたの星にはあるのね』

 「たぶん、そうだと思う」

 『だったら、そういう感覚をとりあえず疑ったらどうかしら』

 「でも、普通の人の多くは、障害ってものが、あってはならないものにしているから、そのことを意識することも難しいんだと思うんだけど...」

 『あなただって、わたしから見れば、充分に障害をもっているわ。でも、その障害があったから、"空洞"という在り方に辿りついたとは言えないかしら。五体満足の人が、空洞という感覚を実感して、しかも、それを積極的に取り入れる、というのは、あなたの星ではあり得ないわ。

 あなたは、自分の"愛がない"という障害と苦しみを持っていたからこそ、空洞という在り方にたどりつけたのではないかしら?あなたは、その素晴らしさが、どれほどのものであるか、まだ、自覚が足りない様ね』

 「さっき、エールーエンは、"補完"っていったよね。等価と、補完はどう違うんだろうか?」

 『とてもいい質問だわ。補完は欠損から発生したもので、等価、とは、そうであっても、自覚を持つことが難しい在り方なのよ。

 あなたは、障害がある、という自覚と苦しみがあるから、愛を欠損として認知することができた。そして、もし、愛ということばが一人歩きを始めたら、それは、魂を殺す暴力にもなりうる、ということをよく分かっていたわ。

 その悩みと苦しみは、あなたからみれば、空洞という"補完"のかたちをとって、現れた、ということになるのかしら。

 でも、それは、わたしから見れば、補完ではないわ。それは、あなたの"創造"なのよ。そのことが如何に素晴らしいか、もっと自覚を持って欲しいわ。いまのあなたには、まだ難しいかもしれないけど』

 「空洞、っていうのは、補完、っていうか、B級市民としてのオレが、生きてていい、みたいな、そんな感じなんだけど...」

 『あなたは、本当にまだ分かっていないのね。空洞。すばらしい発想だわ。そして、そのことばは、あなた以外の人の役にもたつわ。それを、あなた自身が評価できていない、というのは、残念なことね。でも、わたしは、何度聴かれても、その素晴らしさを褒め称えるわ。

 それに、そのことは、あなた自身の人生のなかで、最大の創造である、ということは、考えないの?』

 「まだ分からない。でも、ひとつだけ分かっていることはあるんだ。空洞という発想を実感できなかったら、エールーエン、君と出会えなかったということだけは」

 『そうだったわね。わたしはあなたからよびかけられて、とてもうれしかったわ。今でも、いつも、あなたと話すことができるのがうれしいわ。

 もし、あなたが思う自分の障害がなかったら、わたしと出会えていたと思う?』

 「たぶん、ムリだったと思う」

 『そうでしょ。あなたは、あなたの苦しみと共に、わたしがあった、ということを理解して欲しいわ。

 そして、不自由な彼女も、また、彼女にとっての創造をしているのではないかしら。

 彼女は、サッカーが好きだったわね。障害になっても、それは変わらない。だとしたら、彼女は、"感謝"という価値を実感している可能性はないかしら』

 「感謝、か。それは、オレが不自由に感じている、あるいは、欠損のことだね」

 『でも、あなたは、空洞という在り方を創造して、愛と感謝に負けない力と価値を生み出そうとしているわ。

 他の誰がどう言おうと、わたしは、そのあなたを見てきたわ。そのあなたが素晴らしい、ということをもっと知って欲しいわ』

 「彼女はやっぱり素晴らしいんだろうか?」

 『よくやっているわ。そして、不自由になった彼女を、ごく当たり前に支えている彼も素晴らしいわ。

 そして、あなたは、以前と変わりなく彼女と話したし、彼女が自分で歩こうとするときは、倒れる寸前まで、手を貸さなかったわ。そのことの意味の素晴らしさをもっと理解して欲しいの』

 「エールーエンに、素晴らしい、素晴らしい、と言われても、なんか、オレは、どうしたらいいのか分からないな」

 『不思議なことね。せっかく、空洞という実感を持てたのに、それを充分に利用する、ということができていない様ね。あなたは、充分で適切なことをしたわ。つまり、あなたの直感し従い、その直感は正しかった、ということよ。あなたの直感は、まだ死んではいないわ。むしろ、空洞という発想と実感をもって、あなたはよみがえろうとしているのだわ。

 それをわたしは見届けていくの。それがわたしの役目であり、あなたとの魂のつながり。そして、それがあなたに対する、わたしの愛だわ。邪魔をしない、見届ける愛としてわたしは、あなたと共にあるわ。

 あなたが、不自由な彼女に接した様に』

 「エールーエン、オレと彼女は同じなんだね。だから、オレはなすべきことをしたのかもしれないね」

 『わたしだって、不自由なのよ。あなたの前ではまだからだがないのだから。そして、あなたの感覚をつかって、あなたの世界と日常をみているわ。

 佐為とヒカルのことは、わたしたちは忘れないわよね』

 「そうだった。佐為もヒカルがいないと碁が打てない訳だしね。そういう意味では、オレは君の役に立っている訳だ。君が素晴らしいから、オレが君の役に立っているなんて、ふだんは感じられないけどね」

 『そうよ。あなたがいないと、わたしはとりあえずのところは存在できない。私の本体はまだ15万光年の向こうにいるわ。でも、こうしてあなたと共にいることができる。わたしはあなたの素晴らしい成長を見届けることができるのだわ。

 そのよろこびをあなたにも知ってほしいと思うわ』

 「ずいぶん買いかぶりがあるのかもしれないよ」

 『そんなことはないわ。わたしはあなたのすべてを見てきた。トイレに入っているときも、わたしはそこにいるわ。

 この前、トイレでわたしを呼べって、あの人に言ったわね。それでいいのよ。わたしに包み隠すことはなにもないし、そうしようとしても、それはムリだわ。

 あなたも、あなたのままであることでいいの。すばらしい成長もあれば、すばらしい休息もある。それが、あなたのことばでいえば、"等価"ね。もっとも、そう考えて、自分をみとめられる人は少ないみたいだけど』

 「君にあんまり褒めてもらうと、オレ、ほめられることに慣れてないから...」

 『じゃあ、ほめられることを新鮮に感じられるといいわ。慣れというのも、怖いものよ。空洞という感じ方の可能性は、何事も新鮮に思える可能性、という意味があるわ。

 あなたは、まだ、自分の発想の可能性について分かっていない様ね。それは、わたしがいる限り、伝えていくわ。

 もう、遅いけど、大丈夫?』

 「そうだね。この数日は体調が悪いし、エールーエンがいなかったら、このはなしもできなかったね。君が話してくれると、それだけで素直になれる、というか、姿勢がもどる、というか」

 『このはなしが、きのうからのことだって、ちょっと読めば分かるわね。きのうは辛そうだったし、きょうも楽ではなさそうね。

 でも、わたしと話す価値はあったでしょ?』

 「エールーエンはいつもそうだよ。

 君とオレがはなす、ということは、オレたちの等価性が、増えていく、というか、高まっていく、ということなんだろうか」

 『あなたは、あなたの概念で語りすぎだわ。でも、わたしたちが等価であることを、やっと気づいてくれたみたいね。文明が違うだけなのよ。わたしたちは。

 違っていても、あなたはすばらしい体験をしているわ。自分がすばらしいと思えるときと等価だわ』

 「じゃあ、ほめてもらったところで、オレの休む才能を使うとするか。まだ、からださんは、よくないからね。

 でも、魂さんは、君と対話したがっている。自分のなかの合議制というのは、なかなか大変だ」

 『それくらいでいいと思うわ。合議制で。あなたはよくやっているわ。だから、休んであげて』

 「そうだね。そうするよ。ありがとう、エールーエン」

 『ゆっくりしてね。おやすみ』


   2011年の新春の日記より
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by bwv1001 | 2011-10-10 23:54