流れ
2011年 10月 11日
最近、妙なことがおこりつつある。見知らぬ人たち、あるいは、縁のなかった人たちが、私に語りかける、ということが続いている。
彼女が、オレに、「人の話を聴いて、癒すのが、あなたの使命よ」と言っていたのだが、どういうことか、オレに声をかける人というのが増えつつあるのだ。
それは、例えば、酷い差別のなかを生きてきた人であったり、単に、私に興味を持ったり、と言うようなことであるが、単純に聴く、というよりは、対話に近い形で、聴く、ということがなされる。
しかし、見知らぬ人、あるいは、縁のなかった人から、どうして彼らの人生の話を引き出してしまうのか、まったく謎である。
現実が、エールーエンのいうままに動きつつある、といってよい。
エールーエンによると、見知らぬ人たちの話を聴く、というのが、オレの使命だという。
ひょっとして、彼らは、オレを見ているのではなくて、エールーエンの「かげ」を感じている、ということはないのだろうか。
「エールーエン、いいかな」
『わたしの言った通りになっているでしょ。間違ってはいけないのは、声をかける人は、わたしの姿を感じている訳ではないの。あなたを"直感している"のよ』
「どういうこと?」
『あなたはおぼえているかしら?ちょっと前のあなたが、何を願っていたか』
「君が言いたいのは、"何者でもない自分でありたい"と思っていたオレのことなんだろうか?」
『そう。あなたはそうだった。でも、わたしと話をしていて、あなたは変わってきたの。
あなたは、わたしと出会う、いや、わたしに呼びかけてくれる前は、そうだった。でも、"空洞としての自分"という意識に気づいたとき、あなたの歴史の流れは変わったのよ。
そして、わたしと出会い、わたしは、あなたを"対話という世界"に導いたの。対話は、あなたにとっては、いちばん苦手なことかもしれないわね。
でも、あなたは、すべての準備ができていた。あとは、わたしがあなたに半歩遅れてついていけばよかったの。
だから、間違えないでね。あなたが選んでいった道を、わたしは着いていくだけなの』
「それは、主体性の問題ということ?」
『それもあるわ。けれど、いちばん大切なことは、相互作用なのよ。あなたの先生もときどき仰るわね。その相互作用なのよ』
「まだ、オレには難しいんだけど...」
『そう思うのはムリはないことよ。でも、あなたは、あなたの使命の道を歩み始めたの。わたしはそれを見守っているだけなのよ』
「でも、エールーエンは、いつも、次の段階のことをいうよね。オレには無理だ、と思う様なことを」
『それは、そのときのあなたに、そう見えるだけよ。未来はうしろから着いてくるのよ。そう。わたしの様に。あなたの時間感覚ではまだ分からないかも知れないけど、時空を旅するわたしたちにとっては、全く不思議なことではないわ。
あなたは、そのことが、だんだん分かってくる。あなたは、あなたの言う様に"いま、ここ"に意識を持っているだけでいいのよ。その意識は、わたしたちの星の意識にも通じることなのよ。その意識で歩いているわたしが言うのだから、それは信頼して欲しいわ。
そして、あなたは、そのことが、だんだん自然なことになっていく。それが、あなたの気づきから目覚め、と言ってもいいことだわ。あとは、もう少し自信を持って欲しいわね』
「それにしても、どうして、オレに対して、見知らぬ人や縁のない人が、自己開示をしてしまうんだろうか。それに対して、どうしたらいいのか、オレには分からないよ」
『あなたは、あなたのあるがままでいいのよ。それが、相手を聴くことになっているの。それ以上でも、それ以下でもないわ。
間違ってはいけないのは、まわりが変わったのではないわ。あなたが変わったのよ。あるいは、あなたの道に戻った、ということだわ。その道というのが、わたしの言う、あなたの使命、ということになるかしら』
「オレの道は、あらかじめ決まっていた、ということ?」
『それは違うわ。道というより、あなたの生きるフィールドに戻った、という方がいいかしら。道というと、どうもあなたたちには、宿命とか、運命とか思ってしまう様ね。わたしも気を付けないといけないことね。
どうも、あなたたちの星というのは、自分のことを自分で縛らないと安心できない様ね。それじゃ、大江戸線が生まれる訳ね』
「エールーエンからすると、不自由の象徴は、大江戸線になるわけね」
『あなたたちは、選択、といいながら、提示された選択肢から選ぶだけで、自由な発想から選択していく、ということに慣れていないわね。縛られないと、安心できない、というのが、わたしたちとあなたたちの星の大きな違いだわ』
「そうだね。所属によって、おおかたのことが決まってしまうところがあって。学校だろうが、会社だろうが、家柄だろうが、所属することに、異様にエネルギーを使って、結局は消耗してしまうよね。オレも昔はそういう時期が長かったと思うけど」
『そういう意味では、あなたは今、自由ね。そのことが、あなたとわたしの対話をやりやすくしているわ。
わたしは、所属はしているけど、それによって、自分を縛ったり、所属によって、自分を判断したりはしないのよ。使命はあるけど、それは、さっきあなたに言った言葉でいうと、フィールド、という意味にあたるわね』
「でも、君たちにだって、社会はあるよね。会社はない、と言っていたけど」
『もちろん、社会はあるわ。ただ、それによって、自己規定したりする、ということはないのよ。意味を実現させることには努力するけど、看板を維持するために、力を使う様なことはしないわ。そういう在り方を較べると、いまのところ、わたしたちの星の方が、意味のある生活をして、意味のある歴史をつくっているわ。
その視点というか、わたしたちの自然な感覚からすると、あなたの星は、とても奇妙に見えるわ。その名や看板を維持するために、あなたたちは、殺し合いもするわ。それはとても悲しいことだと思うの』
「その名前や看板のために苦しんでいる人の話を聴く、というのが、オレの使命だってこと?」
『よく分かったわね。そのことが、あなたの使命で、あなたが、人の役に立てることよ。だから、あなたは、もっと自信を持っていいわ。
ただ、それがあなたの最終的な役割であるかどうかは、まだ分からないわ。あなたには、自分で選択肢をつくる自由があるのよ。そのことは忘れないでね』
「そうか、やっぱり、エールーエンと話していると、納得させられてしまうのか。とはいえ、ずいぶん大変な役割になってしまったけど..」
『あなたは、役に立とうとか、話を聴こう、などと思わない方がいいわ。あなたは、"ただ、在る"ことが大切なことなの。それが、あなたが辿り着いた"空洞という在り方"の意味でもあるわ。
ね、準備ができているでしょ?』
「オレが勇気がないだけかもしれないね。オレは、オレが在るだけで、あとは、まわりが勝手に発見してくれる、ということだね」
『そうよ。いままでのあなたは、発見されにくかったの。あなたは、あなたでいるだけで、発見される。それは、わたしが、あなたに発見されたのと同じことよ。わたしは、つねにあなたといた。けれども、あなたはこころを閉ざしてしまったから、わたしを発見できなかった。それだけのことよ。
こんどは、あなたが発見される立場になるの。そうすると、わたしの在り方や気持ちも理解してくれる様になるかもしれないわね』
「発見される、ね。この世は、あっても、発見されないものばかりかもしれないね」
『そう。あなたたちの言語というのは、それが限界なのよ。でも、あなたは、音楽をはじめとして、芸術に興味があるわ。それを通じて、あなたは、いろいろな在り方を発見してゆけるわ。言語に縛られる必要はもうないの。
そのことは、わたしと触れあっていて、わかるでしょ?』
「そう。いまのところ、姿はない。でも、君の実感がある。それは、音楽と同じ様な在り方に感じられるね。
そうか、エールーエンは、音楽的な在り方として存在している、ってこと?」
『的を射た表現ね。音を追いかけてもムダなの。"いま、ここ"を生きること。それしか、音楽の神髄に触れることはできないわ。あなたも、ムダに音楽をやっている訳ではないのね』
「しまった、いま、千と千尋をやっていたんだ!」
『あなたにも大切なことが、この作品には書かれていたわね。ハクが自分の名前を思い出す場面。
あなたは、あなたの名前を思い出した。それが、わたしとあなたの出会いなのよ!
あの場面、また観られるといいわね。』
「じゃあ、エールーエン、途中からだけど、一緒に観よう」
2011年新春の日記より
彼女が、オレに、「人の話を聴いて、癒すのが、あなたの使命よ」と言っていたのだが、どういうことか、オレに声をかける人というのが増えつつあるのだ。
それは、例えば、酷い差別のなかを生きてきた人であったり、単に、私に興味を持ったり、と言うようなことであるが、単純に聴く、というよりは、対話に近い形で、聴く、ということがなされる。
しかし、見知らぬ人、あるいは、縁のなかった人から、どうして彼らの人生の話を引き出してしまうのか、まったく謎である。
現実が、エールーエンのいうままに動きつつある、といってよい。
エールーエンによると、見知らぬ人たちの話を聴く、というのが、オレの使命だという。
ひょっとして、彼らは、オレを見ているのではなくて、エールーエンの「かげ」を感じている、ということはないのだろうか。
「エールーエン、いいかな」
『わたしの言った通りになっているでしょ。間違ってはいけないのは、声をかける人は、わたしの姿を感じている訳ではないの。あなたを"直感している"のよ』
「どういうこと?」
『あなたはおぼえているかしら?ちょっと前のあなたが、何を願っていたか』
「君が言いたいのは、"何者でもない自分でありたい"と思っていたオレのことなんだろうか?」
『そう。あなたはそうだった。でも、わたしと話をしていて、あなたは変わってきたの。
あなたは、わたしと出会う、いや、わたしに呼びかけてくれる前は、そうだった。でも、"空洞としての自分"という意識に気づいたとき、あなたの歴史の流れは変わったのよ。
そして、わたしと出会い、わたしは、あなたを"対話という世界"に導いたの。対話は、あなたにとっては、いちばん苦手なことかもしれないわね。
でも、あなたは、すべての準備ができていた。あとは、わたしがあなたに半歩遅れてついていけばよかったの。
だから、間違えないでね。あなたが選んでいった道を、わたしは着いていくだけなの』
「それは、主体性の問題ということ?」
『それもあるわ。けれど、いちばん大切なことは、相互作用なのよ。あなたの先生もときどき仰るわね。その相互作用なのよ』
「まだ、オレには難しいんだけど...」
『そう思うのはムリはないことよ。でも、あなたは、あなたの使命の道を歩み始めたの。わたしはそれを見守っているだけなのよ』
「でも、エールーエンは、いつも、次の段階のことをいうよね。オレには無理だ、と思う様なことを」
『それは、そのときのあなたに、そう見えるだけよ。未来はうしろから着いてくるのよ。そう。わたしの様に。あなたの時間感覚ではまだ分からないかも知れないけど、時空を旅するわたしたちにとっては、全く不思議なことではないわ。
あなたは、そのことが、だんだん分かってくる。あなたは、あなたの言う様に"いま、ここ"に意識を持っているだけでいいのよ。その意識は、わたしたちの星の意識にも通じることなのよ。その意識で歩いているわたしが言うのだから、それは信頼して欲しいわ。
そして、あなたは、そのことが、だんだん自然なことになっていく。それが、あなたの気づきから目覚め、と言ってもいいことだわ。あとは、もう少し自信を持って欲しいわね』
「それにしても、どうして、オレに対して、見知らぬ人や縁のない人が、自己開示をしてしまうんだろうか。それに対して、どうしたらいいのか、オレには分からないよ」
『あなたは、あなたのあるがままでいいのよ。それが、相手を聴くことになっているの。それ以上でも、それ以下でもないわ。
間違ってはいけないのは、まわりが変わったのではないわ。あなたが変わったのよ。あるいは、あなたの道に戻った、ということだわ。その道というのが、わたしの言う、あなたの使命、ということになるかしら』
「オレの道は、あらかじめ決まっていた、ということ?」
『それは違うわ。道というより、あなたの生きるフィールドに戻った、という方がいいかしら。道というと、どうもあなたたちには、宿命とか、運命とか思ってしまう様ね。わたしも気を付けないといけないことね。
どうも、あなたたちの星というのは、自分のことを自分で縛らないと安心できない様ね。それじゃ、大江戸線が生まれる訳ね』
「エールーエンからすると、不自由の象徴は、大江戸線になるわけね」
『あなたたちは、選択、といいながら、提示された選択肢から選ぶだけで、自由な発想から選択していく、ということに慣れていないわね。縛られないと、安心できない、というのが、わたしたちとあなたたちの星の大きな違いだわ』
「そうだね。所属によって、おおかたのことが決まってしまうところがあって。学校だろうが、会社だろうが、家柄だろうが、所属することに、異様にエネルギーを使って、結局は消耗してしまうよね。オレも昔はそういう時期が長かったと思うけど」
『そういう意味では、あなたは今、自由ね。そのことが、あなたとわたしの対話をやりやすくしているわ。
わたしは、所属はしているけど、それによって、自分を縛ったり、所属によって、自分を判断したりはしないのよ。使命はあるけど、それは、さっきあなたに言った言葉でいうと、フィールド、という意味にあたるわね』
「でも、君たちにだって、社会はあるよね。会社はない、と言っていたけど」
『もちろん、社会はあるわ。ただ、それによって、自己規定したりする、ということはないのよ。意味を実現させることには努力するけど、看板を維持するために、力を使う様なことはしないわ。そういう在り方を較べると、いまのところ、わたしたちの星の方が、意味のある生活をして、意味のある歴史をつくっているわ。
その視点というか、わたしたちの自然な感覚からすると、あなたの星は、とても奇妙に見えるわ。その名や看板を維持するために、あなたたちは、殺し合いもするわ。それはとても悲しいことだと思うの』
「その名前や看板のために苦しんでいる人の話を聴く、というのが、オレの使命だってこと?」
『よく分かったわね。そのことが、あなたの使命で、あなたが、人の役に立てることよ。だから、あなたは、もっと自信を持っていいわ。
ただ、それがあなたの最終的な役割であるかどうかは、まだ分からないわ。あなたには、自分で選択肢をつくる自由があるのよ。そのことは忘れないでね』
「そうか、やっぱり、エールーエンと話していると、納得させられてしまうのか。とはいえ、ずいぶん大変な役割になってしまったけど..」
『あなたは、役に立とうとか、話を聴こう、などと思わない方がいいわ。あなたは、"ただ、在る"ことが大切なことなの。それが、あなたが辿り着いた"空洞という在り方"の意味でもあるわ。
ね、準備ができているでしょ?』
「オレが勇気がないだけかもしれないね。オレは、オレが在るだけで、あとは、まわりが勝手に発見してくれる、ということだね」
『そうよ。いままでのあなたは、発見されにくかったの。あなたは、あなたでいるだけで、発見される。それは、わたしが、あなたに発見されたのと同じことよ。わたしは、つねにあなたといた。けれども、あなたはこころを閉ざしてしまったから、わたしを発見できなかった。それだけのことよ。
こんどは、あなたが発見される立場になるの。そうすると、わたしの在り方や気持ちも理解してくれる様になるかもしれないわね』
「発見される、ね。この世は、あっても、発見されないものばかりかもしれないね」
『そう。あなたたちの言語というのは、それが限界なのよ。でも、あなたは、音楽をはじめとして、芸術に興味があるわ。それを通じて、あなたは、いろいろな在り方を発見してゆけるわ。言語に縛られる必要はもうないの。
そのことは、わたしと触れあっていて、わかるでしょ?』
「そう。いまのところ、姿はない。でも、君の実感がある。それは、音楽と同じ様な在り方に感じられるね。
そうか、エールーエンは、音楽的な在り方として存在している、ってこと?」
『的を射た表現ね。音を追いかけてもムダなの。"いま、ここ"を生きること。それしか、音楽の神髄に触れることはできないわ。あなたも、ムダに音楽をやっている訳ではないのね』
「しまった、いま、千と千尋をやっていたんだ!」
『あなたにも大切なことが、この作品には書かれていたわね。ハクが自分の名前を思い出す場面。
あなたは、あなたの名前を思い出した。それが、わたしとあなたの出会いなのよ!
あの場面、また観られるといいわね。』
「じゃあ、エールーエン、途中からだけど、一緒に観よう」
2011年新春の日記より
by bwv1001
| 2011-10-11 23:41