あるクラリオン星人のと対話


by bwv1001

ひさびさに対話で

 「エールーエン、いいかな」

 『さっきから、師匠とわたしの星のことばかり聴いていたわね。そのことをここでも知らせましょうか』

 「そうだね。ウチらの星の参考になるといいんだけど」

 『さっき、のらにゃあ(野良猫)のことを、師匠が聴いてくれと言っていたわね。師匠は大事な質問をするのね。とても感覚が生きている人だと思うわ』

 「そう、師匠は、いきものさんを大事にするから」

 『でも、お猿さんは、あんまり可愛く思わない、と言っていたわね』

 「うん。実はオレもそうで、ちいさいトカゲさんとか、そっちの方が可愛いと思う。どういう訳か、お猿さんは可愛いと思えないんだな」

 『確かに、お猿さんには悪いけど、失敗作だったかしら。わたしたちの先祖は、わたしたちに似た存在をつくろうとしたのだから。結果的に、あなたたちという在り方でおさまった訳ね』

 「でも、どうして外見が似ている、ってことが大事だったの?」

 『さっきも、別の質問で言ったわ。同じ友、と思えるといいと思うからよ』

 「でも、それにしては、オレたちの内面には問題がある訳でしょ?」

 『そうね。なにか、違う方に行ってしまったわ。現状的には、あなたたちの言葉でいうと、"似て非なるもの"だわ』

 「何がここで、こんなに違ってしまったんだろう。

 師匠が、君の言葉を読んでみて感じたのは、"とってもまともな人だわ"ということだったんだ」

 『私の様な現れ方をすると、ちょっとヘンなこと言うんじゃなか、とか想像する訳ね』

 「確かに、君たちの現れ方には、オレたちは慣れてないから。だって、突然、ヘンなところに、ヘンな姿で現れたら、オレ、コワイよ」

 『それはごめんなさいね。私たちも、現れ方については研究してるから、許してね。だから、次回は、最新研究の現れ方をするから』

 「だから、その、最新研究ってゆうのがコワイんだって。でも、この前上野で会った人はちょっとびっくりした。仲間なんでしょ?」

 『そうよ。まあ、最新研究かしら』

 「昔でいう、スーパーモデルみたいな外見だけど、若いのに、落ち着きがまるで違うんだよね。だから、君に聴いてみたら、そうだ、というから、"なるほど、これなら、君がいたら分かる"と」

 『ちょっと、ファッションセンスがまた違うと思うけど、あなたたちには、違って見える訳ね』

 「うん、違う。雰囲気というか、オーラが違う。波動が違う」

 『よくそこまで分かったわね。けっこう溶け込んでいるつもりなんだけども』

 「やっぱり分かる人が見たら、分かるんじゃないかなー。オレも君のことが、すぐに分かりたいけど」

 『それは心配ないわ。あなたにはすぐ分かるわ』

 「それで、話は戻るんだけど、にゃんこさんの話...」

 『そうね。あなたの街の近くでは、あんまり大切にされていないのだと思うわ。今はのらにゃあさんすら見ないでしょ?』

 「そう。そのことが怖い。担当の人もいるんだろうけど、そういう問題だけじゃないだろう、って」

 『あなたたちは不思議よね。にゃんこさんには、結構構う人はいるけど、ホームレスの人には、ほとんどの人が関わらないわ。そのことがおかしいとは思わない?』

 「うん、確かにおかしい。ただ、にゃんこさんは、人間とちがって、自分で毛の服を着ているし、夏には生え替わるし、そして、あんなにいつも自分で手入れしているもんね。

 でも、人間の場合だと、いちど、ホームレス状態になってしまうと、風呂にも入れない。もちろん、住む家など持てない。仕事にもつけない。

 だから、にゃんこさんと違って、どんどん汚くなっていってしまうから、余計に、近づけないんだ。人によるけどね」

 『あなたは、事情はよく知っているわね。ここまでよく頑張ったわ。
 でも、あなたは、そのために、何かしようとは思わないの?』

 「難しい質問だね。オレがバッハを歌ったときの、牧師さんの指揮者の先生だけど、自分でおにぎり握って、炊き出しをやってるんだ。分け隔てをしない先生でね。やっぱりこの人はエライんだと。偉そうじゃないところがまた、エライって、なっちゃう。

 ただ、そのエライ、ってことが、おにぎりとか受け取る人のコンプレックスにもなるでしょ?"自分はこんなじゃない、ダメ人間だ"って。そこが難しいよね」

 『あなたのいうことは分かるわ。配慮ということね。相手に対する想像力、ということね。

 さっき、あなたと師匠は、エスカレーターの話とか、電車の席の話とかしていたわよね。その話とも繋がるわ。

 でも、ホームレス状態に対して、もっと関わることはできないのかしら。もちろんにゃんこさんの問題も、同じくらいに大切だわ。

 なぜかというと、それらは、あなたたちの内面を表現しているからよ。それを思うと辛いものがあるわ』

 「ただ、それは、オレが病んでるんだと思うけど、ホームレスの状態から積極的に救おうとはできない。身元引き受けする余裕がないのと、あんまり汚かったら、オレはやっぱりヤダもん。自分からは積極的にはなれないな。

 でもいちばん怖いのは、"わたしは正しいことをしてる"みたいなノリで、ホームレス救済に向かうって、これはこれで病気なんではないか、と。正しいことと言って、それを振り回されたら、救済される方も、その周りの人も、これは辛いよね」

 『あなたの言っていることはよく分かるわ。ただ、あなたの場合、ちょっと自己観察と他者観察から、自分の感覚を不自由にしてしまっているのではないかしら。私がみたいと思っているのは、何も考えないで、すっ、と出てくる何かなのよ。

 それが、あなたの街や星では欠けているんではないか、って、さっき師匠と話していたわね』

 「そう。師匠の場合は、すっと手がでる。そこが凄い。あるいはいたたまれなくなる。だからといって全てに直接関わる訳ではないんだけど」

 『でも、師匠のさっきの話しぶりを聴いていると、とてもよく分かるわ。どうしてあんな人が、自分は更正しないといけない、とか思ってしまうのか、それが不思議だわ。

 というか、そう思わせようとするシステムや関係が、あなたの星や国にはあるのよ。それは確かに直視する必要があるわ』

 「オレ、怖いのは、なんか、きょうは怖がってばっかりだけど、"運動"みたいになっちゃうのが怖い。自分の立場をつくるための、あるいは、他から仲間はずれにされないために、そこに関わるとか、なにか、そういうの、子供の頃にみているから」

 『それは大切な視点だわ。だけど、今聴きたいのは、ねぐらに困っている人に、一夜の宿を貸せないかということよ』

 「それだね。そこがいちばん根本的な問題だね。オレもそれできる自信ないし、そのために声をかけたってことはあんまりないよね。それなりに身ぎれいにしている人は、何人か泊めたけど。それは、女の人だったり、外国のひとだったり、家のない人だったりはするけど、ホームレスを長年やってます、という人には、オレはする勇気がないね」

 『あなたは、実情を知っている訳でしょ。一部でしかないとしても。あなたは、何かしてあげられることはないのかしら。

 別にけしかけている訳ではないわ。ただ、にゃんこさんの話と、ホームレスの人のことを考えると、そのことが最初ではないか、と思うの。

 でも、まだあなたはマシな方かもね。何人か、家のない人を泊めたりしている訳だから』

 「でも、エールーエンの言っていることが、いちばん問題なんだと思う。なんで、一夜の宿も貸してやれるこころの余裕がないのか、ってことだよね。それがオレたちの街の病気だってことだね」

 『そうね。こころの余裕というのは、適切な表現だわ。それがいまのあなたたちにはないのね。

 今のあなたが、誰かホームレスの人を引き受ける余裕がないのは分かるわ。でも、それでも、何かできることがあるんじゃないかって思うの。

 私の星にも、ホームレスの人のがいない訳ではないわ。むしろ、のらにゃあさんはいなくて、面倒をみている人がたくさんいるわ。

 ホームレスの人のというのは、わたしの星の場合だと、世の中に馴染みが持てなくて、魂が傷ついている場合が多いわ。そういう人には、マスターが声をかけるの。あなたもさっき言っていたわね。声をかける人が、コンプレックスを持たせる様ではいけないと。その点、マスターは超越しているわね。

 だから、あなたの世界でいうと、マスターは治療者でもあるし、ケースワーカーでもある、ということになるかしら。それも、魂をあつかえる治療者、ということね』

 「そういう意味では、オレたちの星では、どういう人がマスターなのか、なかなか接する機会がないなー。それに、マスターって、最近では自己申告制で、また、それが事件とか起こすから、誰が本当のマスターか、わかんないんだ。それに、日常のなかに、マスターが普通に出てくることって、この国では、今はないよね。

 出てくるとしたら、超能力者とか、そういうふれこみで出てくる。また、それをありがたがる人も結構いるんだ」

 『あなたが、私と話せていることも、そういう風に分類されてしまうのかしら?』

 「それはあり得るね。実際に、それで驚いて、というか、興味本位にいろいろ聴いてきた人はいたけど、問題なのはそれじゃない。君と話している内容が問題なんで、君と話せていることが問題ではないんだけど...」

 『そういう捉えられ方をしてしまう訳ね。

 でも、あなたの師匠は、私の言っていることが、物凄くまともに感じた、と言っていたわね』

 「そう。いまは、まともなことがまともに取り上げられないし、異常なことが、かえってもてはやされたりもするし。だから、君とはまともな話ができるって意味では、ありがたいよね」

 『私は私の感覚と、体験から言っているだけよ。私の星ではそうだ、というだけの話。それを、マトモとか、マトモじゃない、という基準でみるのもどうかしら、とは思うわね。

 ものごとは、比較することで意味のあることもあるけど、違いを認める、という段階で判断を保留する、ということも大切だわ。そうでないと、私たちは、あなたたちにとって、神になってしまうかもしれないわ。それは、ちょっと危険ね』

 「ウチらの日常では、違いを認めるって余裕もなくて、どんどん排除していく、っていう方向でものごとや関係性が処理されてしまう傾向が強いね。だから、さっき出た"こころの余裕"というものが、なくなっているんだと思う。もちろんホームレスの問題も同じなんだ」

 『そういう意味では、わたしたちの様な、違う文明と接してみる、というのは悪いことではないかもしれないわね。派手にはできないけど、この会話みたいに、地道にやっていくのがいいかもしれないわね。

 ただ、天体の運行の方が、そこまで待ってくれるか、というと、そういう訳ではないから、わたしたちに接する前に、そこで、あなたたちは、選択を迫られる、ということになるのだと思うわ。それは決して楽な変化ではないということよ。

 あなただって、この対話が始まってから、もうわたしと話したことを"体験"することでしか分からない、という段階にきているわ。それは、あなた自身でしかできないことよ』

 「そうだね。それはオレ自身がよく分かるよ。けれど、どうしたらいいか分からない、って感覚でいるんだ。それがいま、いちばん大変なことだね」

 『すぐに選択をしなければいけない、と思ってはいけないわ。停滞する時期もあれば、どんどん選択していってしまう時期もある、ということよ。

 ただ、今回に限っては、残った時間がすくない、という訳ね。あなたが悩むのも自然なことだわ。あなたたちの国のことばで、"なるようになる"というのがあるわね。そういう面もあることを、気にとめておいた方がいいわ』

 「いずれにしても、大変な選択を、選択肢の少ないなかからしなければいけない、ということだね。それは覚悟しているよ」

 『晴れの日もあれば、雨の日もあるわ。でも、今回は、そんなことばでは、なぐさめにもならないわね。でも、わたしたちのことを信じていて欲しいわ。わたしもできるだけのことをするわ。

 そして、何より、あなた自身のことを信じていてね』

 「そうだね。自分を信じなければ、難しい選択をすることはできないね。

 酷い言い方をすると、難民、あるいはこの星からのホームレスになる、ということかな?」

 『確かに、ある意味ではそうね。でも、わたしがいるわ。わたしのことをを待っていてね』

 「そう。君がいる。それで充分だ。だから待ってる」

 『そうね。わたしも待っているわ』


   2011年の新春の日記より
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by bwv1001 | 2011-10-30 00:35