あるクラリオン星人のと対話


by bwv1001

貨幣のことを対話で その一

 最近、サイゼリヤで安いワインをひっかけて、彼女と対話している時間が増えた。自分の家でやるのとも違い、ワインの味を変えながら話すのも面白い。

 欠点は、その場にキーボードがないこと。更に、酒が入っているから、細部の記憶が落ちること。とはいえ、お金の問題を数日前から話していたのだが、再現できるのか。途中からライヴになるかもしれないが、やってみる

 「このまえ、お金の話をしたよね」

 『そうね。これは、あなたたちの世界とは、ずいぶんと感覚が違っているわね。正確な意味では、あなたたちの世界と違って、私たちの星では、お金というか、貨幣は存在しないのよ』

 「やっぱりそうだったんだ。オレは、お金っていう在り方は、どうも怪しい、と思っているんだけど。ちょっと別の視点かもしれないけど、お金に規定されちゃうって、お金をもってる人も、奴隷化してしまっている、っていうことなんじゃないかと思うんだ」

 『"規定"という性質は、お金だけではなくて、言語にも似ているわね。規定という話から入るか、それとも、お金の話からいくか、どっちにする?』

 「とりあえず、お金って言っちゃったんだから、お金からいかない?それに、規定の話は、拡がりもある問題だし、別にやった方がいいかもしれない」

 『そうね。お金、というか、あなたたちの言うお金と、私たちのお金は、全く違うということから始めたいわ。

 あなたの国のことばでは、お金を"はらう"って言い方をするわね。このことから考えてみない?』

 「払うっていうのは、神社とかでもやる"お祓い"ってのもあるよね。悪いものを落とす、っていう発想が、お金の払うと共通しているんじゃないかな」

 『私もそう思うわ。悪いから、って何かするとき、"自分にはなにもできないから"って気持ちを持つわよね。悪いとか言って、払う訳でしょ?』

 「だから、お金って、罪悪感の表現なんじゃないかと思うんだ。自分にできないことをしてもらって、実際何もできないことの代わりに、お金を"はらう"んじゃないかと。できもしないことに、何かしたことにするつもりにする、ってことじゃないかな」

 『そうね。あなたたちの国のことばで言えば、そういう発想はできるわね。でも、わたしたちの世界からすると、そこがおかしいのよ。

 だれかに、何かしてもらったとき、そこで感じることが、私たちとはまるで違うのよ。

 自分にできないこと、あるいは誰かがしてくれたことに対してすることは、まず"感謝"ではないの?ところが、あなたたちは、悪いからってお金を"はらう"の。それで、全てがなかったことにしてしまうの。それは違うわ』

 「君が、自分たちの星には、お金が存在しない、というのは、そういう意味なんだね。罪悪感とか、借りではなく、感謝する、という意味で、まるで方向が違うんだね」

 『そうね。感謝が中心のやりとりなら、基本的にはお金も必要ないわ。

 でも、敢えて言うなら、わたしたちは、感謝を測ることで、お金にかわる様なことはしているわ。感謝できればできるほど、あるいは、適切な感謝ができれば、それでいいの。あなたの世界では、感謝の前に、値段をつけてしまうけど。

 それに、あなたたちの国では、何かをする側が、値段をつける、値踏みをするというのが当たり前の様ね。私からすると、これは不思議な光景だわ。"これだけ感謝して欲しい"と値段が言っているのね。それは、わたしたちからみるとかなり奇妙な光景だわ』

 「でも、オレなんか、感謝っていうと、むちゃくちゃ難しくて、それに、感謝って言葉にトラウマがあるんだよね」

 『要するに、あなたが言いたいのは、育てられ方が悪かったから、感謝もできないし、感謝は自分にはできないことだ、っていうことかしら』

 「よく分かったね。感謝しなさい、とか言われても、そこにあるのは、たぶん君がいう、本来的な意味の感謝ではなくって、権力関係なんだよね。"しなさい!"と言われても、まず、感謝が何か分からない。そして、その前に、高圧的に、感謝っていわれる。従うことを強要されているだけなんだよね。

 だから、感謝って感情が、いまだに持ててないし、自分から出てきたことが、感謝だったとしても、そのことを信じられないんだよね。それに、なんと言っても、"感謝できない自分は、生きている資格がない"って、ずっと思い込まさせていた。だから、生きようと思うことは、つい最近までしなかったんだ。オレは生きてちゃダメだ、って」

 『確かにそれは、トラウマだわ。あなたの様だったとしたら、私の星で生きていくのも、大変かもしれないわね。

 でも、私たちは感謝を強要することもないし、わたしたちの中にいれば、どういうものか分かってくるのではないかしら。リハビリとトラウマ治療にはいいかもしれないわ』

 「君たちなら、感謝の意味が分かっていそうだよね。それでいて、そのことが、空気や水の様に当たり前なんでしょ?」

 『そうよ。よく分かったわね。でも、私だって、あなたの星や国に生まれていたとしたら、きっと、とても、生きていく気になれないわ。

 あなたの辛さというのは、あなただけのことではないのだと思うけど、それはちょっと酷すぎるわ。そして、そのことが、大きな問題として取り上げられないということが、全く不思議だわ。それも、何度もいうけど、"否認"から生まれている現象ね。あなたたちの最大の病気は、否認だと言ってもいいと思うわ』

 「お金も結局、否認から生まれたものなんではないのかなー。何かしたつもりにしておく、何もできないから、って、自分の問題をお金を払うことで、したことにしちゃう訳でしょ。これは、見ないようにしている訳だから、やっぱり否認だよね。

 そういう意味では、お金というのは、否認から発生している在り方なんだと思うけど」

 『わたしも多分そうだと思うわ。何もできないんだけど、したことにする、というのがお金を払うことだとしたら、物凄くストレスが溜まっていくんでしょうね。

 逆に、払ったことで、感謝の方は実感できないとか、そういうことになるのだと思うわ』

 「お金が悪いものとされてしまうのは、やっぱりそこなんじゃないのかな。何もできないことを意識しなくとも、お金があれば、それで済んでしまう訳だから、そこに理解とか共感とかナイよね。

 それでいて、こっちが払ってるんだ、みたいな、払ってる方がエライみたいな倒錯が生まれるんだと思うんだけど。だから、お金を払っている、というのは、やっぱり、実は何もしていない、ということなんだと思うけど」

 『それを聞いたら怒り出す人はたくさんいるんじゃないの。"こっちは金を払ってるんだ!文句あるか!"って。

 でも、やはりあなたたちにあって、私たちにはない、会社というシステムだけど、企業は、賃金を出してるから、金払ってるんだから、何でもやれ!プロだろ!って言う訳でしょ。

 それって、会社がお金の絶対性に立脚した奴隷制度以外の何物でもないと思うわ。すくなくとも、マトモなシステムではないし、あなたたちの魂もおかしくなるのは当然のことよ。しかも、奴隷システムに、自分から志願して行くんでしょ?

 やはり、そうした関係性は、非常に問題だわ。いま、あなたの横でやってる番組だけど、ちらっとみると、おかしいことばかりだわ。

 本来プロとして評価されるべき仕事をアルバイトとして使うとか、まるで自尊心ということの意味が分かっていない様ね。お寿司屋さんの社長かしら?こんなものが、エライ社長として評価されるというのは、あなたたちの尊厳という意味では、全く理解できることではないわ。

 そして、この番組を観た、どれくらいかの人が、それをマネしようとするんでしょうね。愚かな行為以外の何物でもないわ』

 「君の様な文化を持っていると、本当に愚かしいことなんだろうね。それもやっぱり、お金っていうものの妙な性質が可能にしているんだろうけど...」

 『お金がないと生きていけない星のあなたとしては、どんな風に思っているの?』

 「お金というのは、物凄く奇妙で、何かの代わりをつとめることはできないけど、何に対しても権力を持っている、というか、おかしいんだ。

 野球だって、バッターボックスに入るのは、人間の選手であって、札束がバッターボックスに積んである、ってみたことないからね。お金は、野球もサッカーもできないし、お寿司だって握れない。オレみたいに、考えたり、君と話したり、それをキーボードで打つことなんか、お金には絶対にできないんだ。

 なのに、お金で野球の選手が買えたりする訳でしょう?何もできない存在が、いちばん権力を握っているんだ。これっておかしくない?」

 『あなたは自分の社会のシステムをよく客観的に捉えているわ。わたしたちが、ナンセンスだと思うのも、あなたの言い方でほとんど言えていると思うわ。

 でも、問題なのは、"では、どうするか"ということがあるわね。でも、それについては、あなたの星では、有効な代案もない様ね。

 だから、わたしは言うの。わたしたちの様な、感謝を中心にしたコミュニケーションというが、可能にならないか、という話よ』

 「さっきの続きが聴かせてほしいな。オレ、君に愚痴ばっかり言ってただけだから」

 『でも、愚痴にするだけではなくて、ちゃんと分析している。その上での愚痴というのは、あってもいいんじゃない?愚痴が悪いことである筈もないし、何より、問題を明らかにする、というところからものごとを始める、というのは、真っ当な在り方だと思うわ』

 「でも、オレ、君の星みたいに、お金じゃなく、感謝が中心のコミュニケーションをしてると聴くと、一層オレ自身がダメなんじゃないかと思ったりするんじゃないか、とも思って...」

 『あなたの社会の問題は、魂とか感情とかを真っ当に扱わないことに慣れすぎているのよ。

 魂とかこころとか、を直視することが面倒だから、お金というシステムが発達したんではないかしら。今まで出てきた言葉でいうと、"合理化"の問題にあたることだと思うわ。あなたも、その環境に、不適応ながら、適応しているのではないかしら。

 適応が悪いこととは言わないわ。ただ、お金の問題は、あなたたち自身の"存在の忘却"の問題にそのまま繋がっている、ということを言いたいの』

 「そう。エールーエンの言うとおり、問題は存在の忘却なんだ。だから、例えば、この前寄ってみた預言cafeみたいなところが繁盛するんだと思う。あそこも、結局は、コーヒー代というけど、お金と預言が引き替え、という上手いシステムを取ってるよね。ただ、みんな、お客さんは、自己の存在を忘却しているから、預言をもらうだけで、満足しちゃうんだろうね」

 『そうね。あまり疑問を持たずにいる人が多い様ね。

 でも、あなたは自分で降ろせるのだから、もう行く必要はないわ。
 きょうは、これくらいにして、また、続きをやらない?この問題は根が深いわよ。それに、わたしたちの感謝のシステムについては、また字数もいりそうだし』

 「そうだね。続きはまたやろうか。ありがとう、エールーエン」

 『ワインはなくともいいわ。でも、ワインがあると、また展開が面白いわね。おやすみ』


   2011年の真冬の日記より
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by bwv1001 | 2011-11-05 23:40